2012年6月1日金曜日

「ル・アーヴルの靴みがき」

「ル・アーヴルの靴みがき」(2011)、アキ・カウリスマキ監督作品では何年かぶりの長編。こちらも、カウリスマキ節は健在、小津安二郎に学んだと思われるショット、カットつなぎは、相当の冴えをみせている。この映画の広報・キャチフレーズは「心をみがけば、奇跡はおこる」で、鑑賞後感は、ちょっと旧作群と異なるところに一考を要する。
底辺生活を送る主人公・靴みがきや不法移民といったシビアな要素をプロットに据えながら、暮らしと小コミュニティの人間関係を描き、希望を提示した人情喜劇にまとめたところが時代へのメッセージ。ウディ・アレンの表現とは違っているが、両者の方向性は支持したい気分だ。両監督とも、ほとんどの作品が人間生理に見合った上映時間にまとめられているのも、テンポよし、心地よくエンディングを迎えられる理由と思う。
表現をシンクロする手法としての音楽もアレン同様に、独特の色合いを出している。もっとも、カウリスマキの世代は私と近く、ロックのスピリッツに共感部分があるものの、奇妙でクールな仕様にらしさがある。「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(1989)などといった奇天烈なバンド描いた作品もあった。自らの嗜好なのが、フィンランド人の嗜好なのか、映画表現として意図しているのかは分からないが。

「ル・アーヴルの靴みがき」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

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