2012年6月2日土曜日

「ルート・アイリシュ」

イラクの現況と軍事分野の民営化という、わが国の国民意識からは相当、離れているかに思われる主題を扱ったケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」(2010)。一貫して労働者層の視点で描き続けたローチ作品で、イギリスは階級社会であることを再認識してきた。(資本主義)社会の歪みを提起する語り口は、必ずしも幸せや救済に帰結しないが、今回は、友の仇討劇として、「一般受け」はしないであろう陰鬱な印象を残すドラマを提示してくれた。
ほとんどスターダムの俳優が出演しないローチ映画の演出には、ヒューマニティ、とりわけ、優しさの描出に特色がある。「ルート・アイリッシュ」では、提示した問題の迷宮に入り込むにつれ、リベンジを画策する男の怒りとバイオレンスが増幅していく。これが現実、イラクの、欧州のジレンマということか。ウディ・アレンと、ほぼ同世代でのケン・ローチ、老境のあり方では好対照の表現であった。ローチ作品の脚本は、概ねポール・ラヴァーティが仕事しているってこともあるのかな。
「宇宙開発も民間で」が現在進行形。軍事分野に限らず、グローバリゼーションと新自由主義の下での「官卑民尊イデオロギー」っていうのも気にしたい昨今である。

「ルート・アイリッシュ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

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